春の闇2005/05/28 22:35

もうそろそろ
  そろそろと あの
乳房のような母親の
重い布団を喰いちぎって
しっとりとした春に
飛び出していこうか

街では
風なんか 暖かくて
体はますます宙に浮いて

もうじりじりに
  じりじりと あの
胸板のような父親の
厚いカーテンを焼きすてて
ねっとりした闇へ
飛び出していこうか

空には
月なんか 溶けていて
心はますます食欲湧いて

春の闇は
じっとり汗がふく

おまけに
異質の血が騒いだりして

もう たまらなくて
たまらなくて しかたがない

――どうも 背中のあたりが
むず痒い





分類:春、「春狂三部作」
製作:1992年くらい

啓蟄ざわわ2005/05/29 21:56

一夜の嵐が通り過ぎて
凍てつく封印が ゆるゆると
ゆるゆると溶けて
背中の戒めは みしみしと
みしみしとほどけていくようで
そわわ

蟲蛇蟇獣に紛れて
姿のないもの ごそごそと
ごそごそと脱け出して
くねらせ かきわけ ずりずりと
ずりずりと這い出て 辺りに
わらら

うかうかするうち
羽化して 浮かれて はらりはらり
はらりはらりと 風のふりして
通りすがりの頬を そろりそろりと
そろりそろりと 近くに寄って
さわわ

梅は咲いたか 桜はまだかいな
啓蟄ざわわ


分類:春、「春狂三部作」
製作:2003年03月15日
備考:「梅は咲いたか 桜はまだかいな」は小唄から。

立春をすぎると2005/05/31 01:37

新聞の片隅に
指摘されるまでもなく
立春をすぎると
枯れ草の地面が
なんとなく
輝いているようで
それが
オオイヌフグリ(予定)なのは
とっくに承知

画面の世間話に
教えられるまでもなく
立春をすぎると
公園通りの道々が
なんとなく
深くなってきているようで
それが
桜並木(確定)なのは
とっくに承知





雨が降る


立春をすぎると
一雨ごとに
春が近づくなんて
とっくに承知


分類:春
製作:2002年02月10日。2005年05月31日加筆
備考:「一雨ごとに/春が近づく」親から教えてもらった小さなこと、大事なこと