満開の桜の下で2006/07/13 12:18

星座がぼんやりするしてくると
胸の辺りは午前六時になり
握りつぶした破片が
たまに凍りつくのを除けば
静かな生活になった

相変わらず
父親は蔵から出ずにいる
いつまで紡いでいるかは分からないが
そのうち
諦めて出てくるのだろう
どうやっても
冷え切った卵は孵らないのだから







そして嵐がやってきた







嵐が去った後
蔵は跡形もなく去っていった
まるで存在していなかったように
そのせいかどうか
庭の片隅の樹齢数百年という姥桜は
満開

あの場所で待っている

そう言いながら
地下室にいて無事だった
父親の指し示した
満開の桜の下
舞い落ちる花びらの中
朧げ現れる
彼女




シ・ア・ワ・セ・デ・ス・カ

唇の微かな囁きに
僕は応える

幸せです
こうやって会えただけでも
幸せです
忘れられなかったことが
幸せです
これが最後でも
そして思い出しました
あなたは
どこかへ行ってしまったのではなくて
飛翔の夢を夢見ていたのですね





すべての花びらが舞い落ち
微笑みながら薄れていく 彼女を
いつまでも いつまでも見つめている
胸の空洞が花びらで満たされていくのを
感じながら


製作:2002年2月19日
分類:連作「『飛翔の夢』の後」の2

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