自由への道2005/07/31 00:08

両手両足首に絡みつくこの鎖を解いて、山の
あなたのあなたに会いに行きたい愛に生きた
いと恋焦がれるも、冷たい壁に向かっては溜
息をつき高い格子窓を仰いでは嘆き遠い牢の
扉を睨んでは憤るも、今の我の境遇は昨日今
日明日と変わらず、一日一度放り込まれる糧
を貪り、鎖を引きずりながら狭い牢内を歩き
回るうちに、ぼんやりと記憶が窓の外に溶け
出していき、我はいかなる理由で彼の地に封
じ込められたのか、我を鎖に繋ぎ止めたのは
どのような者たちなのか、我はいかなる者で
あるのか思い出すこともかなわず、ただただ
牢の片隅に咲く名も知らぬ小さな花のように
微かに残るあの顔あの肢体あの姿のみを頼り
に、焼けつく厳しい日差しと凍てつく寂しい
夜を乗り越え、か細い希望にすがりつつ、い
つの日にかこの牢を抜け出し、風の吹く先に
ある約束の地を夢見るばかり。しかし、我を
繋ぎ止めるこの鎖の鍵と牢の扉の錠は、随分
と昔にはずされており我が身はすでに自由。


分類:散文詩
製作:2002年8月14日
備考:トノモトショウ再生プロジェクト参加作品